昨日、フランスの友人からメールが来た。
「パルム・ドールを受賞した是枝監督はどんな人物なのだ?」
ということだった。
是枝監督とは、とあるパーティーだったかで、一度お会いしたきりである。が、ある時期、近い空間で育ったことは紛れもない事実なのである。
その空間とは、東京都清瀬市である。
昨日BSフジで放送された「海よりもまだ深く」の舞台になった団地は、旭が丘団地で、私が育った団地は台田団地である。 是枝監督は旭が丘団地育ちで、「海よりもまだ深く」でも旭が丘団地がロケ地となり、よく知っている風景が次々に登場した。でも、私は旭が丘団地ではなく、台田団地の住民だったのだ。確かに旭が丘団地界隈へはよく行っていたが、住んではいない。だから、是枝監督が描いている団地の人間模様というのは、「あくまでも旭が丘団地」特有のそれなので、よくは知らない。
清瀬でよく聞かれるのは.....
「私は是枝監督の住んでいた旭が丘団地によく遊びに行っていて、旭が丘のことは隅々までよく知っているわ」
という是枝監督ありきの自慢話だが、旭が丘団地ほど、住んでみなければその良さも悪さも分らない団地はないんじゃないかなと思うのだ。
我が故郷台田団地も、中里団地も、竹丘団地も、野塩団地も、それぞれ団地と名が付いてはいるけれど、雰囲気は、まったく異なるのだ。
ただ、団地の共通点があることも事実で、生まれも育ちも価値観も異なる人々がそこいらにたくさんいるのだから、近所付き合いで苦労をしたり、人間臭いことは、何処の団地でもあることなのである。
パルム・ドール受賞作である「万引き家族」でも、「海よりもまだ深く」でも、是枝監督が描く世界というのは、紛れもない「人間臭さ」なのである。リアル過ぎる描写に「身に覚えがあるような」木っ端恥ずかしい思い出が重なり、でも、所々に救いのシーンがあったり、ほっこりしたりで、何とも言えない気持ちにさせてくれるのが、是枝作品なのである。これは多分なのだけど、是枝監督ご自身が旭が丘団地で育ったからこそ、描ける世界観なのではないかな、とも思うのだ。